マイクロ波加熱装置・誘電率の樫村研究室
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マイクロ波加熱装置の概念図
研究設備へのリンク
マイクロ波加熱装置
仙台に建造されたアスベスト無害化炉(120 kg /hour)
講義資料


【マイクロ波加熱とSDGs】
近年、SDGsへの取り組みが化学・鉄鋼産業でも高い関心を得ています。
自然と人間の調和的な共生を可能にする新しい社会は、現在の化石資源依存型から光エネルギー依存型への変革が必要です。
特に、素材製造業は二酸化炭素排出量の9割を占めており、これは人類にとって早急に解決しなければならない問題です。
この化学プラントの新しい火力として、私たちはマイクロ波加熱に注目しています。

当研究室では、誘電率測定や電磁界シミュレーションをベースとし、電磁炉を設計しています。
素材製造分野を光エネルギー依存型へ変革するためです。
具体的には、「工業分野でのエネルギー供給問題」に対して化石燃料による火炎からのマイクロ波加熱・光等の電磁場エネルギーへの転換を採用することで解決し、人類が繁栄する上で必須となる基礎素材開発(金属、セラミクス、乾燥、焼結、触媒反応、有機物合成、冶金、焼却灰、バイオマス、燃料電池、炭素材料、薄膜、リサイクル、マイクロ波炉・焼成炉設計、etc.)へ応用を研究しています。
これに伴う特殊な連成場(熱場・電場・磁場・流体場)と化学反応場を理解し、
マイクロ波化学の原理を究明し、これを基盤として、プロセス課題の実用化への道筋を示します。
これは、宇宙太陽光発電、核融合などにより得られたクリーンなエネルギー吸収による、環境調和型プロセスの最適化です。

再生可能な光エネルギーは電気技術との相性がとても良く、
高い効率で電気エネルギーへと変換する手法が次々と報告されています。
しかし、高いエクセルギーを持つ電気エネルギーを、化学エネルギ―に変換する試みは不充分であるように感じています。
電磁波のもつ高いエクセルギーを有効に利用し、
従来の金属・セラミクス製造法が抱える課題である劣質原料の再利用を解決し、
低温で低炭素排出な新しい素材製造プロセスが提案したいと考えます。

素材製造分野における二酸化炭素排出量を大幅に削減することで、人類の発展に貢献したい。
その上で、プロセスの基礎となる物質とエネルギーの変換ダイナミックスの原理解明にとりくみたい。
そんな志を持って、マイクロ波加熱・電磁プロセシング・吸収の原理究明(特に、マイクロ波効果)に関する化学反応研究を推進しています。

環境調和型プロセスイメージ 従来の素材・化学製造プロセスを太陽エネルギー依存型プロセスへ変革することを提案したい。
そのための新しい特徴を持つ化学プロセス炉を目指しています。

青矢印は本研究で提案する新しいプロセスへの寄与を示します。これにより全産業の9割を示す素材製造分野における二酸化炭素排出量を大幅に削減できます。

(例えば、製鉄分野における二酸化炭素の理論削減値は、マイクロ波加熱を用いることでおおよそ50%へ削減できます。)

【マイクロ波加熱の特徴】
マイクロ波加熱の特徴として、一般に急速(迅速)性, 選択性が挙げられます。

例えば, 電子レンジで紅茶を温めた際, 我々は速やかに紅茶を温めることができ、
この急速に物を温められる点は、マイクロ波の持つ特徴のひとつとして広く知られています(急速加熱)。
これを上手に化学反応へ利用すれば、熱伝導率が悪い大きな耐火物でも、
内部まで迅速に温めることができます。
これは産業応用によく利用されるこの加熱法の良い特徴のひとつです。

電子レンジで加熱された紅茶はその器となるカップと異なる温度になります(一般には、カップの温度は紅茶よりも低いのです)。
これは紅茶の方がカップよりマイクロ波のエネルギーを吸収するために生じる現象です。
これを上手に化学産業に利用すれば、
加熱された物質も内部にμmオーダーの微小な領域に数十〜数百度もの温度差を形成することができます。
これまで, この非平衡温度場は, プロセス設計におけるデメリットとして認識されてきました。
しかし, 1999年, この非平衡場を用いた革新的な金属焼結がRoyらのグループより報告され、
この報告を皮切りに微小領域での非平衡状態が広く注目されるようになりました。
この現象はこの加熱方式が化学反応を高速化できる特徴として良く報告されています。

現在では, 我が国においても, こうしたマイクロ波加熱のもつ特徴(急速加熱・選択加熱性)が学術原理として広く認識され,
積極的に材料プロセスに応用していく流れが形成されつつあります。
実用化研究も積極的に探索され、電磁加熱を用いた化学・高温プロセスが次々と実用化しています。
これまでは、食品、ゴム加硫、耐火物乾燥に限られていた実用例が、
高い温度域の化学反応へ拡大しています。
当研究室では、これらの高温プロセスや化学反応に材料屋の視点で貢献したいと考えています。
 
【新しいマイクロ波加熱装置】
装置にも大きな進歩がありました。
現在、マイクロ波を生み出す発振器分野では、従来のマグネトロン方式から半導体方式への転換が試みられています。
電磁設計では、加熱に適したマイクロ波照射が研究・報告されています。
周波数では、材料吸収やプロセス構築に適した周波数選択が試みられています。
当研究室では、化学反応の原理究明から発振器、加熱容器、プロセス構築までを行ってきました。

私たちのラボではマイクロ波加熱による化学反応に適した装置を開発してきました。
現在、マイクロ波加熱装置の価格は減少傾向にあります。
この価格の減少は、安価な半導体発振器の登場によるところが大きいのですが、
それでも、およそ200-400万程度の予算が必要です。
私たちはこれを低価格にする装置の改造・自作技術を研究してきました。
高温における誘電率や透磁率の取得し、
対象となる化学反応の原理を究明し、
計算科学を有効に利用することで、
装置改造のコストダウンを試みます。
スケールアップへ挑戦するために、マイクロ波反応装置への最適化研究にも多く従事してきました。

マイクロ波加熱プロセスにおける全工程の研究を、
一つの研究室が実行することで、
各工程を考慮した要素開発が可能になります。
その結果、様々なマイクロ波加熱装置のスケールアップ研究を達成してきました。

マイクロ波加熱は工学的出口が近い分野です。
そのため、tonスケールやそれ以上の大きなマイクロ波反応に挑戦しています。
日産数トンから数十トンのマイクロ波加熱炉の設計に多く従事するなかで、
様々な研究者・技術者に支援して頂きながら、多くのエンジニアリングを蓄積してくることができました。
企業研究が多いので、以前はなかなか公開ができませんでしたが、
近年、マイクロ波化学プラントを積極的に取り入れた企業様も増えてきて、状況も変化してきました。
例えば、公開できる反応装置の実績については以下と装置についてのページをご覧ください。

製鉄で採用されたマイクロ波加熱装置
建造されたマイクロ波製鉄炉で、原理実証へ利用されています。 
日産160 kgのスケールで銑鉄を製造できます。
この炉は30kW クライストロン 4基で大出力の電磁照射を実現しています。
誘電率の温度特性を計測することで、合理的なマイクロ波照射を達成しました。

詳細は以下。
K. Kashimura et al.: Chemical Engineering & Processing, 76 (2014) 1– 5
K. Nagata et al.: Journal of the Technical Association of Refractories Japan, 34 [2] (2014) 66-73
マイクロ波加熱装置

【誘電率と炉設計】
当研究室では、誘電率測定や電磁界シミュレーション、マイクロ波化学解析をベースとし、
熱プラズマ・電磁波を「エネルギー」として取り入れて金属・セラミクス製造分野へ応用し、 工業化を見通せる大型の原理実証を行い、各分野の炭酸ガス排出量の削減・循環型資源によるプロセス構築を行なってきました。
誘電率から算出される計算工学をベースに、高温プロセスを実現できるマイクロ波加熱装置を設計してきました。

排出量割合の大きい鉄鋼、化学工業、廃棄処理などに焦点を絞り、それぞれの低炭素排出化、省資源・省エネルギー化、高速化等の工学的解を得ています。
太陽光由来の再生可能エネルギーを利用するためには、電気を化学プラントの熱源とする研究が必要不可欠です。
電磁、マイクロ波加熱は有力な候補であるので、
これら新しい火力の適切な化学・高温プロセス開発(金属、セラミクス、触媒反応、乾燥、焼結、有機物合成、冶金、焼却灰、バイオマス、燃料電池、炭素材料、薄膜、リサイクル、マイクロ波反応炉・焼成炉設計、etc.)への運用法を研究しています。
高い温度での誘電率を始めとした基礎物性値を取得し、環境へ貢献することを目指しています。



各分野における二酸化炭素排出量(R.2 環境省発表資料)。

この図から、製鉄分野・化学工業の炭酸ガス排出量が多いことが特徴として読み取れるので、
これらを半減すれば、我が国の二酸化炭素排出を大幅に削減することができることがわかります。
マイクロ波加熱を用いることで、冶金・化学・材料分野の酸素放出量を削減することが当研究室のモチベーションです。

マイクロ波加熱による化学・高温プロセスを構築するために、
この技術が持つメリットやデメリットを理解し、
学術的な原理(特に、マイクロ波効果)を究明する必要があります。
必要な物性値(吸収、誘電率、透磁率、etc.)の計測、産業化へ直結する装置開発へ発展させる、
これら一連の研究に取り組んでいます。
SDGs時代の我が国の産業別CO2排出量

シミュレーションを基盤とした新しいマイクロ波加熱炉の設計】

これまでのMW炉設計は、
幾何工学や電磁設計工学を基本とした理論と実験により進歩してきました。
計算科学の発展に伴い、これら理論と実験に加えて、
シミュレーションという新しい設計の柱が進歩しています。
理論を基に実際に加熱炉を作ってみると、
「上手く加熱できない」や「効率が達成できない」など理論で予測が難しい問題が抽出されます。
計算実験はこれら理論と実験の間をつなぐ大事な設計工程の一つです。
シミュレーションがすべてという考え方も誤りですが、
理論や実験だけで加熱炉を作成するのも誤りで、
これらはきちんと連携されて良い加熱炉ができるというのが当研究室の考え方です。
当研究室では、様々な物質の誘電率を高温度まで取得し、
計算科学に基づいた化学反応炉設計を適切に取り入れています。

【6kW級マイクロ波加熱炉のシミュレーション結果】

CADで作成されたデータに実際に測定された誘電率を設定し、
炉内の電界分布を見積もった計算結果です。
炉の左右には電磁界を攪拌するための羽が配置されていますが、
シミュレーションを用いると、
この回転に伴い電界集中が変化する様子がわかります。
こうした計算工程を理論と実験の間にいれることで、
これまでの電子レンジとは異なる、
新しいマイクロ波加熱炉を建造できます。
また、装置の建造に必要なコストを大幅に削減することができます。
数値計算は電磁波の化学反応への応用を予見、解析を支援する強力な道具です。
6kW加熱炉数値計算結果

空洞共振器(TE103, 1.5 kW @2.45GHz, 915 MHz)

材料がどの程度で瞬間的に加熱できるかを調べる装置です。
加熱対象に合わせて、装置の抵抗(インピータンス)を変化させることができるので、幅広い加熱対象を高い効率で加熱できます。
電界と磁界を分離して加熱することもできます。
また、周波数も市販の電子レンジと同じ2.45GHzと材料を内部まで加熱できる915MHzの2種類を配備しています。

空洞共振器  例えば、アルミナ粉に炭素を15Vol %添加した混合体の場合、
マイクロ波出力は40 W(市販の電子レンジの1/10)ですが、800℃まで1 分で到達できます。
(詳しくは、Materials, 11 (2018) 169-182 で報告。)
加熱が難しい物質でも加熱できる特徴があるので、理想的な効率を算出するために利用しています。
電界だけ照射、磁界だけ照射といったこともできるので、複合材の特定の物質だけを狙って加熱したり、金属やセラミクスを焼結したりと用途は幅広いです。
高温誘電率・透磁率測定装置

誘電率測定装置 計算実験で炉を作るときには、高い温度の材料がどの程度マイクロ波を吸収するかを調べる必要があります。
当研究室では共振摂動法による高温誘電率・透磁率取得に着手しています。
共振摂動法は、材料の温度が高くなった時に容器の温度を制御しやすい特徴をもつためです。
およそ、800℃程度までマイクロ波吸収の特性を評価することができます。
測定された温度特性は、加熱試験とクロスチェックすることで確度を吟味します。
(詳しくは、
SiC: Applied Physics Letters 105 (2014) 034103 - 1-5、   
Fe2O3: Chemical Engineering & Processing, 76 (2014) 1– 5
C: Journal of Applied Physics, Vol.112, 3 (2012) 034905 - 1 – 5
Fe3O4: Hotta et al.; ISIJ、  
Ni1-yO: Physica B, 458 (2015) 35–39
CaO, Talc:  Journal of Hazardous Materials, 284 (2015) 201–206   で報告。)

詳しくは研究設備・マイクロ波加熱装置のページをご覧ください。

【主要論文】
Takeshi Miyata*, Syun Gohda, Takashi Fuji, Hironobu Ono, Hibiki Itoh, Yuta Nishina, and Keiichiro Kashimura: Pure electric and magnetic fields applied to reduced graphene oxide for defect repair and oxygen removal, CARBON, 171, (2021) 10-15

J. Fukushima, S. Tsubaki, T. Matsuzawa, K. Kashimura*, T. Mitani, T. Namioka, S. Fujii, N. Shinohara, H. Takizawa and Y. Wada: Effect of Aspect Ratio on Permittivity of Graphite Fiber in Microwave Heating, Materials, 11 (2018) 169-182

 H. Sugawara, K. Kashimura*, M. Hayashi, S. Ishihara, T. Mitani, N. Shinohara: Behavior of Microwave-Heated Silicon Carbide Particles at Frequencies of 2.0-13.5 GHz, Applied Physics Letters 105 (2014) 034103 - 1-5

K. Kashimura*, N. Sabelstrom, K. Imazeki, K. Takeda, M. Hayashi, T. Mitani, N. Shinohara and K. Nagata: Quasi-Stable Temperature of Steady State of Hematite by Microwave Heating, Chemical Engineering & Processing, 76 (2014) 1– 5

K. Kashimura*, M. Sato, M. Hotta, D. K. Agrawal, K. Nagata, M. Hayashi, T. Mitani and N. Shinohara: Iron Making from Fe3O4 and Graphite using Microwave Energy at 915MHz, Material Science & Engineering A, 556 (2012) 977–979

【主要解説記事】
樫村京一郎、篠原真毅:マイクロ波による環境調和型金属精錬, ケミカルエンジニヤリング (2013 年11 月号)

樫村京一郎: マイクロ波加熱と材料プロセッシング、金属, アグネ技術センター (2013年8月号 特集)

樫村京一郎: マイクロ波によるたたら製鉄法のルネサンス、化学と工業、日本化学会、誌73 巻、 3 月号



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