中部大学総合工学研究所教授 林良嗣

林 良嗣

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TEL:+81-(0)568-51-9400


役職等


研究の略歴

長年にわたって、交通と都市のあり方について、研究を進めてきた。

1970年代末に、東京湾横断道路(現アクアライン)建設が、東京大都市圏の住宅、商業、工業立地による土地利用と地価に及ぼす効果予測モデルを構築した。それが、世界で9つの、実物スケールで計算が可能な代表的なモデルの一つとなり、89年からは9つのモデラーが集まって世界交通学会(WCTRS: World Conference on Transport Research Society)の第1号の分科会として、自らが委員長となって発足した。

90年代は、温室効果ガスによる気候変動が問題となり、自らの研究も道路、鉄道、航空などの交通システムから排出されるライフサイクルCO2を算出し、都市のスプロールしてしまった都市をコンパクトに戻して得られるCO2削減効果を計量分析した。これらは、「Transport, Land - Use and The Environment」(1996, Kluwer)、「Urban Transport and the Environment - An International Perspective」(2004, Elsevier)、「Intercity Transport and Climate Change - Strategies for Reducing the Carbon Footprint」(2016, Springer)などとして出版された。

92〜96年にかけて、当時毎日通勤に8時間以上使う人が10%に達して人類最悪の大渋滞に見舞われたバンコクに都市鉄道を導入するJICAプロジェクトの委員長を引き受け、4年を費やして、研究室での土地利用拡散、CO2排出などのシミュレーション結果を持参してタイ国政府に説得を繰り返した。その結果、バンコク都知事の英断も得て、プロジェクト終了からわずか3年後に、スカイトレイン1号線が開業した。1990年代には道路対鉄道の予算比が1:99であったものが、「交通計画2020」では82:14に大逆転するなど、政策への実践にも貢献している。

2001年、日本初の分野融合型の大学院環境学研究科を名古屋大学に仲間と設立し、今日の難問には、文理融合による横断的学問づくりを推進した。文部科学省グローバルCOEプログラム「地球学から基礎・臨床環境学への展開」はその成果の一つであった。また、人口減少と高齢化社会に向けた主戦略としての“スマートシュリンク”を主導してきた。現在も、JICA/JSTプロジェクト「Thailand4.0を実現するスマート交通戦略」を主導している。これらの成果は、「持続性学-自然と文明の未来バランス」(2010, 明石書店)、「都市のクオリティストック-土地利用・緑地・交通の統合戦略」(2009, 鹿島出版会)、「東日本大震災後の持続的社会-世界の識者が語る診断から治療まで」(2013, 明石書店)、「中国の都市化の診断と処方-開発と成長のパラダイム転換」(2014, 明石書店)、「レジリエンスと地域創生-伝統知とビッグデータから探る国土デザイン」(2015, 明石書店), “Disaster Resilient Cities−Concepts and Practical Examples”(2016, Elsevier), “Balancing Nature and CivilizationーAlternative Perspectives from Philosophy to Practice”(2020, Springer)などの著書に発表されている。

90年代末から今日にかけては、クオリティオブライフ(QOL)の研究に傾倒している。これは、プロジェクトを、道路・鉄道の新設による時間短縮を工場やオフィスでの労働に振り向けたなら得られる生産額(GDP)の上昇分を便益とし、その建設に要する費用で割った費用便益比で評価してきたことに、大いに疑問を持ったからである。第一、私の元同級生の多くは、リタイアして働いていない。時間をインプットとして与えても、GDPは稼ぎ出せない。しかし、リゾートへの旅が容易になって癒され、心身ともに健康となり、幸せな生活を送り、医療費を縮減できる効果の方が大きいかもしれない。若い女性は、稼いだ時間を、労働にではなく、ショッピングやレジャーに使いたい。

社会科学の分野で、QOLを分析する研究も多く見られる。当方では、これに空間概念を導入し、ある場所に住んで得られる個人の幸せ度QOLを、都市や地域のいろんな場所に位置するサービス(病院、店舗、幼稚園・学校、寺社などの施設、自然資源など)へのアクセスのし易さから求める「QOLアクセシビリティ法」を開発した。すべての個人のQOLを合計すれば、ブータンで有名になった国全体の国民総幸福(GNH)も、自動的に算出できる。この手法を用いて、現在、都市の予算を路面電車建設と街路樹等緑化に、どんな比率で投資すべきか、日本の観光地に伸びる高速道路やインド新幹線(ムンバイ〜アーメダバード間500km)が、男女、老若、異なる所得層などに与える効果の違いを計測している。

2015年7月からローマクラブ・フルメンバーとして活動し、都市、交通の気候危機回避への方策をインプットしてきた。2019年8月には、ローマクラブ日本の設置が認められて、私が代表に就任し、中部大学に事務局を設置した。日本人フルメンバーの小宮山宏(三菱総合研究所理事長、第28代東京大学総長)、野中ともよ(NPOガイアイニシアティブ代表、元三洋電機会長、元NHKメインキャスター)、黒田玲子(中部大学特任教授、元ICSU国際科学者会議副会長)の各氏と連携して、気候危機など西欧中心主義に基づく20世紀文明が破綻した今日、日本や東洋の果たすべき役割を探り、また、他国のメンバーを招聘してシンポジウムなど活動を進めている。ローマクラブ日本の設置に呼応して、自らも分担執筆したローマクラブ50周年記念出版の日本語版「Come On! 目を覚まそう!- 環境危機を迎えた”人新世”をどう生きるか? -」(2019, 明石書店)を出版した。

今年に入って、COVID-19パンデミックが世界を襲ったのに対応して、昨年まで会長を務めていた世界交通学会(WCTRS)にCOVID-19 Taskforceを立ち上げ、60カ国に住む会員に専門家調査を実施し、交通が意図せずしてパンデミックに如何に加担してしまったか、ロックダウンにより航空、鉄道、観光などへの被害、規制や財政支援など緊急措置の効果、CO2削減への効果などを、世界規模でトップ研究者に集まってもらって分析し、各国政府、国際機関へ提言を発出している。


審議会委員等

運輸政策審議会委員,国土審議会特別委員,JICAバンコク及びハノイ都市交通計画等策定調査委員長,欧州委員会European Research Council (ERC) Advanced Grant審査委員などを歴任.

現在,日本学術会議連携会員,日本工学アカデミー理事,中央環境審議会臨時委員,リーディング大学院プログラム委員会および環境エネルギー科学技術委員会など文科省の基幹的委員会委員, OECD-ITF(国際運輸大臣会議)アドバイザー(表彰委員),等を務める.


学会活動等

世界交通学会(WCTRS: 70カ国より1,000余名の会員)では,「交通と土地利用」及び「交通と環境」分科会委員長,学会賞選考委員長,“Transport Policy” (Elsevier刊)共同編集長, 世界交通学会(WCTRS)会長を務めた.

国内では,土木学会の学会誌幹事長,企画委員長,土木計画学研究委員長,副会長,日本環境共生学会の会長を歴任.


賞罰

土木学会論文賞,同環境賞,日本不動産学会論文賞,同著作賞,環境科学会論文賞, 世界交通学会オレンジ賞,アジア交通学会功労賞,国際交通安全学会業績賞,環境大臣表彰などを国内外18の受賞.


国際教育

エルンスト・ヴォン・ワイツゼッカー(ローマクラブ共同会長)、(故)ハンス=ペーター・デュール(ハイゼンベルクの後継者)、 アレキサンダー・リコタール(ゴルバチョフ政権最後の主席報道官)ら、世界第一級の学者、政治家を客員教授に招いて、毎年、学生への講義・ゼミを継続。また、UCバークレー、ミュンヘン工科大学、同済大学などへ、学生を多数派遣して来た。他方で、英・リーズ大学、オックスフォード大学、独・ドルトムント大学、中国・同済大学、南京大学、大連理工大学、北京交通大学、インド工科大学ボンベイ校、 豪・ニューサウスウェールズ大学、南オーストラリア大学、タイ国・チュラロンコーン大学、カセサート大学、タマサート大学などから、 客員教授、客員研究員、大学院博士課程を受け入れてきた。



研究テーマ

Compact Cityなどの理想都市を静的に描くだけではなく,その動的達成過程(発展途上国都市にはSmart Growth,成熟国都市にはSmart Shrink)の方法論を考究する.

  1. 発展途上国の経済発展・都市化・モータリゼーション・環境影響のモデリングと国際比較研究
  2. 少子高齢時代の持続可能な都市/農村経営のためのSmart Shrink戦略
  3. Quality of Lifeにもとづく社会資本及び国土都市空間の評価方法
  4. 低炭素化のための交通戦略と技術・政策手段の国際比較研究
  5. 将来世代に引き継げる,経済を支え,低環境負荷で,美しい都市ストックである「継承可能都市」の研究
  6. COVID-19など感染症を考慮に入れた,交通・都市の根本的な改革研究

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最終更新日:
2020/6/8