畜産技術協会の委嘱によるアメリカ合衆国視察12/14〜12/24概要報告
牛田一成
12月14日
ノースウェスト96便(DC10)で関西国際空港よりアメリカ合衆国ワシントン州シ アトル着。
国内線に乗り替え。ホライゾン航空2376便(DASH8)でプルマン着。シアトルの入国管理は混み合うという話でなにかと心配していたイミグレも簡単にすむ。プルマン?そんなところだれがしってるんや、とイミグレの係官がいう。3月までの90日間ビザがでる。で、いつ帰るとか聞かれる。下に降りて、荷物をとる。エコノミーとビジネスで出てくるコンベアがちがう。しかしうす暗くしてるのはなぜ?税関をとおって外にでると、乗り継ぎの場合は、おじさんに荷物を渡して、またベルとコンベアにのせる。何だかこれが出口?というような戸を抜けるとメインコンコースの下。上にあがってバスの入り口。なんのことはない、飛行機に乗る通路から飛行場に降りて小さいバスに乗る。別のターミナルに移動。上にあがる。HORIZONと ALASKA AIRのターミナルになっている。プルマンまでは、DASH8という双発のプロペラ機。36人乗り。高度は1000mくらい。飛行機から見える景色は、なかなか印象深い。畑とあれ地が半々くらい。とにかく平らで一本調子な景色。耕地は、丸いかたち。あるいは四角でパッチワークみたい。ところどころひし形に黒くしてあったり、登高線にそってトラクターのあとがあったりして、ナスカの地上絵みたいに幾何学的。小麦畑なんだろう。プルマンに近づくにつれて北側の日陰にちらほら雪が残っている。ようやくたどり着いたプルマン飛行場はなんだか淋しいところ。ターミナルビルにはいると教室くらいの待ち合い室。それから、フロア。搭乗カウンター。荷物受け取りの場所。トイレ。レンタカー屋のブース。外にはアメリカ国旗が掲揚してある。いよいよアメリカにきた感じがする。ホテルのパネルリストがあって電話ができるようになってる。Holliday Inn Expressをよぶ。10分程で迎えにくるという。待つことしばし、バンが現れる。途中、熊飼育センター。そばフェンス内にはシカやめん羊もいる。ワシントン州立大大学の施設である。ついてすぐに大学に電話をしてkristenJohnson博士をよぶ。ホテル横のDenny’sにはいり、食べながら話す。彼女は、現在腸粘膜上皮の増殖を子牛で測定。濃厚飼料租飼料比の影響みている。メタン菌の培養などについてきかれる。アセトジェンについては逆に、けっこう質問される。
12月15日
朝9時に ワシントン州立大学工学部 衛生工学教室Hal Westberg教授と待ちあわせる。車で、彼の研究室に向かう。フォード製の大型バンに乗っており、しかも後部はすっからかんで,いかにもフィールドワーカーらしい。さて、かれは元々畜産学科と関係があった訳ではなく、たまたま友人が畜産学科長であったため、その紹介でKrisJohnsonの仕事を共同で展開することになったという。まったく、技術というのは、そこらにころがっているが、それを必要とする人にわたるかどうかというのは結構偶然の要素が大きいものだと痛感する。ということで、この仕事自体は7年あまりの共同研究ということになる。 彼の研究は、EAP, ワシントン州立大工学部の資金による。6フッ化硫黄(SF6)を用いたトレーサー実験は、新規に開発した技術ではなく、大気環境学者の中ではごくあたり前に使われていた技術であった。湖沼やLandfilからのメタンガスやトレースなガス成分の放出量を測定するためである。これを、家畜に適用できるように工夫したものである。この工夫の最大のポイントはルーメン内での持続的なSF6の放出を保証するしくみと継続的な呼気あい気の採取を可能にしたしくみである。
SF6によるトレーサー実験法の概略について
シンチュウ製の小コンテナにSF6をいれ、テフロン膜を介して微量かつ持続的にパーミエートさせる。放出量をあらかじめキャリブレートしておき、同じ条件のものをルーメン内に投入し、SF6ガスを放出させる。SF6のコンテナーへの注入は、コンテナーをliqN2中で冷やしながらSF6をシリンジで注入してガスを固化させ、ふたをする。放出量は、コンテナーの重量変化を測定しておくことで知る。39℃で加温したときの数値を使用する。だいたい1000ng/minのオーダーであった。3cm長のコンテナーで3から4ヶ月は測定できる。コンテナーの大きさを調整すれば、1年間の測定に使用できる。一頭に一個投入する。ただし回収は、磁石を使ったがうまく行かず。屠殺してとった。(Krisのところで4年間ルーメンに入っていたものをみせてもらった。テフロンがやや外側に膨らんでいたこと、黒い皮膜状のものがついていた)サンプリングのために、陰圧をかけたキャニスターを用意。ここから金属性パイプとテフロンチュービングを介して鼻孔のあたりの呼気を採取する。キャニスターはVからUの字型で、初期のものは金属性。Yokeと呼ぶ。現在のものは塩ビ製。首にフィットさせる。最初に真空ポンプで引いてきつく陰圧をかけておき、サンプリングは1/2気圧になるまで行う。金属性パイプの内口径はかなり細いが、長さを調節することで1/2気圧になるまでの時間を調節できる。24時間とか12時間とか6時間である。サンプリング終了時、N2を注入し陽圧にしガスクロのサンプリングラインに接続する。測定は、いずれもGC。SF6はECD−GC.メタンはFID−GC.SF6は1/10^9まで測定可能。 計算は、qCH4=qSF6*[CH4]/[SF6] qSF6はあらかじめ測定してある。[CH4][SF6]は実測。大体6時間から12時間の測定。24もできるけど、失敗することも考えると、このくらいにわけたほうがいいかもしれないとのことである。
研究の目的
EPAからのファンドで実施している仕事は、まず、牛の生産種類と餌の影響を評価することである。ここから、ある飼養体系の牛にある餌を与えたときにどのくらいのメタンが発生するのか測定する。その結果、放牧時の肉牛で200g/d、コーンサイレージやアルファルファベースの泌乳牛で400g/dくらいとなるようだ。ここから、農業統計に基づいて牛の生産体系別頭数と代表的な飼養条件からメタン放出総量を推定するという作業である。 合衆国全体では、1990年で6.66Tg、1996で6.96Tgとルーメンよりのメタン放出量は6年間で4.5%増となったが、同時期の牛の頭数の増加率よりかは低いので、生産性が高くなったとことを反映しているといえるかもしれないという。公表されている推定値である1990年のCrutzenが示した数値(これはClapperton1966のめん羊モデルに基づく)5.8TgやEPAがGibbs(UC Davis)のルーメンモデルの式から出してきた数値が5.5Tgなどと比べるとWestbergらの実測に基づく推計は高 く出る。おそらく、泌乳牛の数値が高いからだろう。肉牛は、これらのモデルの数値とあまり変わらないからだ。これらの話は、11月に開催された1998 Fall meeting american Geophysical UnionのEOS trans.AGU vol. 79, no 45.(10 Nov 98)でWestbergが講演した内容である。現在ジンバブエウクライナウルグアイなどでトレーサー実験を実施ないしは実施予定中。近日中にフランスにも行く。
学食で昼食後、Westberg教授と別れ、丘の反対側にある農学部方面へ歩く。寒い。それでも、このころはあったかいのだそうだ。通常は、日中でも氷点下のはずで、雪も積もってるらしい。 農学部のとある建物へ。近くまでくると先程とは違って家畜のにおいがする。Johnson博士の部屋を探す。2階にあがった途端に彼女に出くわす。この方法は、EPAが採用しようとしており、そのためいろいろなとこ ろから、このトレーサー方式を習いにきてるし、実際実験を実施しているところもある。UK, NZ, CAN, UKL, IND, ZIMBABYE, FRA, GER, US UTAH, TENNESSIE, ROUISIANNA, GEROGIAなど。 いまのところ、どの飼料成分がどのくらいメタン生成と関係しているのかという点については、検討していない。というのは,GRAZINGの動物では摂取量が評価できないからである。したがって、現時点でどのような飼養形態がメタンを減らすのに有効なのか明言できる状態にないという。飼料添加物でも、たとえば、モネンシンなどの効果も研究者によっては適応が起こって効果がなくなるというところもあれば、彼女のところのように大体平均して15%の減少がコンスタントに見られるケースもある。脂肪酸カルシウム塩の添加は、メタン発生量が減らないけど、生産量が増えるので、生産物単位量あたりのメタンガスということで言うと減るという。いままで、肉牛の繁殖牛および去勢牛(2種類の飼料)、めす子牛(heifers)さらに乳牛(2種類の飼料)、乳子牛(heifers)、オス子牛(calves)とオスウ シにおけるメタン生成を生産現場状況下で実測した。ところが、4万ドルほどあったEPAからのファンドが,きれるそうで、「牛のメタン発生制御」が気にくわないロビーがあるらしい。彼女からは、SF6トレサー法をもちいた牛の個体別測定以外に、半開放の部屋で、複数頭入れて測定したり、6x9mくらいのフィールドをつかって実施する方法も教えてもらった。
SF6の安全性について。
FDAは、SF6について厳しい見方をとっており、肉に関してはまだしも、牛乳については規制される。飼料添加物としての安全性についての実験データをとるには莫大な費用がかかるのでここではとうていできない。これは、実際の農家で実験を実施する際の大きな制限となっている。日本では、可能だろうか。それから、具体的には聞かなかったが、SF6の値段が高いこと。最近とくに、供給が逼迫している。なにかの産業的使用法が開発されるなどしたらしいとのこと。仮に日本でこれらの実験を実施するとして、必要な器具等の供給はWSUでしてもよいとのことであった。 建物内の動物実験施設を見せてもらう。チャンバーの写真をとる。フィステル付きの羊、老齢・巨大なのがいる。やっぱり、フィステル付きの動物をどんどん更新していくのは、ちょっとたいへんだという。

12月16日
朝焼け。のちくもり。きょうは、移動日。9時25分のHorizon航空2171便(DASH8)でシアトルへ。中は、満席に近い。レーニア山が白く光る。下の雲を抜けるとほどなくして、水面が見えシアトルにつく。小雨もようである。飛行機の横で荷物を取ってコンコースにあがる。すこしコンコースを移動して下におりシャトルの地下鉄にのって、北ターミナルへ。上にあがるとUAのカウンターがある。バーで白ワイン+クラムチャウダーで時間待ち。イラクを攻撃したというニュースをテレビが流している。UA1116便デンバー行き(Airbus A319)。デンバーに着くが、なんだか荒涼としただだっぴろい高原。すでに、シアトルとは1時間時差がある。ターミナルに出たら4時だった。地下鉄シャトルにのって、それでメインターミナルにでる。上にあがって、バスの連絡を聞く。Shamrockshuttleというのが4時30に出るそうだ.だんだん日が落ち寒くなる。しかし,見渡す限り何もない草原で,これに類する景色といえば、チベットかモンゴルの飛行場である.2時間弱でフォートコリンズにつく. モージャー博士から伝言があり,お宅に電話をし,明日の約束を確認する.

12.17日
アメリカ農務省・Agriculture Research Service モージャー博士(Arvin R.Mosier)/USDA-ARSと会談.彼の車にのって、ホテルより5分ほどでかれのオフィスにつく。連邦農務省のたてものの4Fである。オフィスがあるだけの感じだが、れっきとしたラボもある。まず,一番の関心事である家畜からのN2O放出についてきいてみる。基本的には、世界的に見てもまとまった仕事はない模様。逆に日本の事情についてきかれてしまう。1995までの仕事に基づいたIPCCのまとめについて話し始める。N2Oについては3章だてで、(1)土壌(農耕地)からの放出量の推定。これは、Nの投入量をベースにした推定で、化学肥料、家畜糞尿、窒素固定、植物遺体の分解を投入の要素とする。これをDirect emissionと定義する。(2)この投入量のうち30%程度は流出などで水系へ逃げる(一部は大気に直接放さんする)。この水系に入った分に基づいてIndirect emissionを推定する。(3)家畜からの発生で、前提として動物の体そのものから発生する量は無視できるほど小さいとする。実際、検出できる程度のN2Oは人の呼気からとれていて、口腔で発生しているらしい。ただし、出てる人とそうでない人とがいる。で、全量が糞尿の処理過程での発生とする。結局書理法別の推定となる。(Closing the global N2O budget:nitrous oxide emissions through the agricultural nitrogen cycle. A. Mosier, C. Kroeeze, C. Nevison, O. Oenema, S. Seitzinger, and O. Van Cleemput. 1998. Nutrient Cycling in Agroecosystems 52, 225-248. の表6 参照)。また、最近のヨーロッパで見るべき仕事がある(A. Barbara. Universitat fur Bodenkultur. Austria: P. V. Roger, Silsoe Research Institute, UK)。1998年の6月にスウェーデンで開催されたEUのWorkshop「Apploaches to Green House Gas Inventories from Biogenic Sources in Agriculture」である。 結局、土壌からのN2O放出を減らすには、Nの利用性を高める事が鍵となる。耕作地からのN2O発生は、土壌の種類・栽培種と栽培法・栽培農家の志向の3つの要素に影響される。農家の志向という要素を除けば、大まかな推計と農家に示す指針の方向性もでてくるはずである。たとえば、対策の一つと考えられている緩効性肥料の施肥の場合、大麦畑では発生量が減少したが、ジャガイモ畑では逆の増加するような結果も出ているらしい。これにくわえて問題は人の要素で、たとえば耕作者によって耕地のマネジメントが異なるので、同じ対策を取っても効果に差が認められる可能性が高い。だいたいは、推奨量よりも多目の施肥と散水になるわけで化学肥料の値段がやすいので2割り増しくらいの投入で収穫を増加させる。結果として、コロラド周辺の砂地の土壌では水系にはいる硝酸量が増大する傾向にあり、実際水に含まれる硝酸濃度が高い傾向にある。 ラボを見せてもらう。ガスクロ部屋があり,島津のGC14BでECD+FIDが4台稼働中。隣の部屋で1人のポスドクが水を濃縮していた。別の部屋には、GC−MSがある。丁度、一人のシニアがタイからのサンプルを分析中。ケールダール分解しほう酸にトラップしたサンプルから窒素化合物を気化させて測定している。もう一台GCーMS少し古いのがある。炭素と窒素を測定している模様。 11時30になったので、まず、フィードロットを見に行く。東南に向かってすすむ。川が流れていて、木もはえているが、木は自然のものではなく全部人が植えたものなんだそうで、たしかに川べりで家のあるところに木が植えてある。道端に、プレーリードックがいっぱいいる。ここらへんから上流にかけては、むかし、ビーバーを獲って毛皮をフランスなどに輸出してたらしい。150年くらい前のこと。それで、フランス語っぽい名前などが土地についてたりする。飼料プラントの塔がみえてきて、フィードロットにつく。ここは、長さ5−6Km奥行き200mくらいの細長い土地のように見える。100Haくらい?一つのペンの広さは0.1Haくらい。ここに70−80頭入ってる。110日くらいの肥育期間である.典型的なオペレーションシステムという.で、糞尿処理は,肥育終了時にバーンからかき出して,それを耕作地に入れるやりかたである。下の土の層を削らない様に糞の層だけかきだす。その硬い層を取ってしまうと窒素成分(硝酸)がどんどんしみ込んでいってしまい水系を汚染するためである。処理に関する法や規制があるわけではない模様。ここでも、近接住民の苦情があって、元々あった場所から移転してやっているらしい。また、苦情に関しては養豚業がかなり問題になっている模様。近日、住民投票があるらしくターゲットは養豚場らしい。水質汚染の問題に関する住民投票らしく,結局、集約的な超大規模養豚や養鶏、それに酪農などが関係してくるとのことである。それにしても、太陽のギラギラがすごく,サングラスなしだときつい。標高が高いのと空気が乾燥してるからで,これも、何だか、ヒマラヤっぽい。 つぎに、山の中にある彼らのフィールドに移動する。北に向かってどんどんさびしいところに行く。鉄道があって、ところどころ小規模な飼料会社のサイロなどがある。NUNNというコミュニティーをすぎると道の両側が草地で人気がまったくなくなってくる。シカがいる。アンテロープ。野生。13マイル。20Kくらいいくと、いきなり、アメリカ国旗が翻ってるとこがあって、施設のゲートである。ここからがものすごい。なにせ、面積が7000Haだそうで、ほとんどが自然の草地。ここは、テキサスからサスカチュワンまでつづく大草原の一部でWestern Great Plainsという地域。1900年ころに入植始まったが、1930年代に入植者が乾燥と過放牧などによって放棄して出ていってしまった跡地の利用で試験場のフィールドになった。ところどころにポツンと木が生えていてそれが家のあった場所を示すわけ。標高は高度計の読みで1650mほど。西にロッキー山脈が見える以外には土地を区切る物がない途方もなく膨漠としたところ。これは、まったくもってチベットやモンゴルの草地と変わらない。中に入ってどんどんいく。見渡す限り、柵以外のなにもないぞー!ここは、それいらい、非常に長期にわたる生態的な研究がされてきた。たとえば、15年前に一度施肥して、その後に起こるガス発生や諸々のことを調査したり、放牧関係の調査などがおこなわれている。たしかに、牛が放牧されてるわ。ありゃ、アンテロープがいる。いいのかな。試験してるのに。しばらくいくと、また、国旗。建物。向かい側に、彼の部屋で見たポスターに出ていたビニール製のゲルのような装置と二酸化炭素のでっかいタンクがみえる。そこでは,二酸化炭素濃度の上昇でC3とC4の草種の構成に変化が起こるかどうかをしらべている.また土壌微生物のガス交換に影響するかどうかなどをしらべている.それで,これらの施設でいろいろ調べていくうちに冬に活性の高いことがわかってきたらしい。温度は低くても微生物の活動が起こる。理由は、ここの場合、砂地という土壌の性質とそれから水であるという。雪と土の表面の間にわずかな水の層ができると、酸素の土壌への浸透が妨げられ土壌が嫌気的になる。そこで硝酸還元による脱窒がおこる。水がないと嫌気にならないからかえって放出量が少なくなるのだという。酸化還元電位を調べたかどうかという話をしたら、していないとのこと。測定に信頼が置けないからだという。それでも、昔に測ったことはあるらしく別ずりをもらう(Soil losses of Dinitrogen and Nitrous Oxide from Irrigated Crops in Northeastern Colorado. A.R>Mosier et al. Soil Science Society of America Journal, 50, 2, 344-348.1986)。それによると、土壌の深さと酸化還元電位の低さは相関するのだが、問題は相関しない場合もあること。この文献の例ではトウモロコシ畑では大体相関するのだけど大麦畑では、まったく相関していない。これも、栽培法や農民の違いによるのかもしれない。
夕方戻り始める。日が沈みかける。西日をもろに受けてまぶしい。ここらの太陽は沈むときでも赤くはならない。空気が乾燥してるから。日本の赤い太陽は湿気の賜物ということ。何やら農場地帯に入る。よくみてろよというのでみてると、ダチョウがいる.MosierはEmuという。編隊をくんでガンのむれが畑からとびたっていく。ロッキーの上にはずっと、レンズ雲のでっかいやつがいて高層の風の強いことを示している。空は、あくまで高い。紫外線がつよいというが、空自体は,それほど黒くは見えない。オフィスに戻りさらに少し話す。

12月18日
8時45分に,Mosier博士の車に乗せてもらいコロラド州立大畜産学科へ。家畜栄養学のジョンソン教授(DrDon Johnson).挨拶して話していると、Matsushima教授がはいってくる。もう名誉教授である.。はじめてあう。これが、あの松島さんか。どこからきましたか?などという。さすがに,名誉教授ともなると暇そうで、コーヒーのみますか?というので、ええと答えたら、Johnson教授の顔が一瞬めんどくさそうになった。松島名誉教授は、じゃあといってコートを着る。スタスタ建物の外へ出ていってしまう。歩きながら話すと,松島先生は、きのうまで九州や東京に行ってて、それで、じつは中国にいたらしい。フィードロットを中国で展開して日本に輸出するつもりとかである。「生協」の二階にあがり、なおも奥のほうまであるいていくと、クラブがある。コーヒーをとる。Johnson氏松島氏の友人がいる。名前は、覚えられなかった。ひとりは、まったくのカウボーイ姿(後で、わかったところではDoxader先生。農学科)。よくみると、松島さんもカウボーイのブーツ履いてる。なるほど。ここは、そういうところか.英語の書き方の本書いたTu博士の話がでる。 専攻は毒物学らしく、サリン事件のときにいろいろ検定を依頼されたりしたようだ。本の話で、Johnson教授が、60000部でたらしいねとか、毒物学の本で、一番売れたんじゃないのとかいう。いや、あれは、日本人に英語の書き方を解説したもので、しかも書きおろしじゃなくて、科学雑誌の連載をコンパイルしたものだからと説明する。部屋に戻りながら、何やら議論してるが、今晩は大学院の卒業式で明日は学部の卒業式ということで、ようするに、以前ばらばらだったのを科学系はいったんまとめてやってたのに、今年はまた学科ごとにばらばらにやるらしく、それについてみんななにやら話している。学生数について聞かれるので、1000人とこたえる。ここは2万人でしょというと、松島先生が23000人と訂正する。やっと部屋に戻った。松島先生はどこかに消える。で、話を始める。誰を知ってる彼を知ってるという話から。基本的には、同業の部類なので共通の知りあいがいるのは当然。INRAでは、M. Vermorel,I. Ortigueのことを話す。ジョンソン教授も、K.ジョンソン博士同様に還元的酢酸生成菌について興味が強いらしく、それで、えーっとだれだったっけ?というのでGerald Fontyでしょうという。INRAとClermontには1976年に行ってるようだ。Rowettのはなしもでる。Ron Lengのことも。というところで、彼の実験施設をみにいく。ちかくにはあるけど、車で移動。よほど用がない限り車には乗らないで、いつもは自転車というエコロジストである。ホテルの横を抜けていく。ホテルの裏側のほうは、建設現場になっていて、政府系研究機関の入る建物を作っているとのこと。さて、畜産施設らしいものが見えてくる。すぐ横を線路がはしってる。元々は酪農研究施設で、800頭からの乳牛がいたらしい。そのときの糞尿をすぼりの池にいれて溜めていたのをとり出して処理するときに途方もない悪臭が発生し、近所にできつつあった住宅街から苦情が出て、結局酪農研究を全部やめることになったそうだ。ラマが20頭ばかりいる。獣医系の教授の誰かが飼っているらしい。ラマは、キャンプに連れていって人が乗ったり荷物をのせたりしてようするにトレイルで遊ぶらしい。高価だが結構需要があるらしい。さて、かれは、この使えなくなった酪農研究施設をつかっている。実験室には、牛用チャンバー2基。羊用チャンバー4基。牛用は、あと2基増やせるように床の処理だけはしてある。チャンバーの工夫が結構してあって、面白い。溶接など学生が自力でやってしまう。牛用チャンバーは前室が作ってあって、ゴム手で作業をするのではなく中に人が入り込めるので作業が楽であるのはいうまでもない。アルコールランプがたくさんあるが、これは、チャンバーのカロリーメーターの校正用で,栓に工夫があってアルコールがもれない様にゴム製にし、注射針を短くしたものをうまくさし込んで空気穴を作っている。隣の部屋には、消化試験用のスタンチョンがある.尿の採取が面白い。オスは尿帯をつけてそこからのホースを18リットルくらいのビンにつなぐ。びんには真空ポンプからのラインが引っぱってあって、要するに陰圧で,尿を動物がした途端にびんに吸い込んでしまうという仕組みである。メス牛には、尿道カテーテルを使う手もあるが、尿道の細菌感染などトラブルが多いので、接着剤で、バルブルパッチを外陰部を覆うようにはりつけて使うという。チャンバー関係の測定装置は二階にある。ここも、学生の工夫がいろいろ見られてたのしい。下のオフィスにもどって、Phetteplaceをまじえて話す。彼女がやっているのはEPAプロジェクトの一部で、Rumen Livestock Efficiency Programという。ようするに、ある生産システムで発生する温室効果ガス(GHG)の総量を評価するというものである。アイデアは、ようするにメタン発生を抑制して生産性も高めるようなやり方をこれだけで評価してはいけないのであって、あるシステム全体(家畜の導入、飼料の生産、飼料の処理、家畜の成長と生産、生産物が消費者のもとにとどくまでの処理と運搬など)のなかで、どのようにGHGが発生してくるのか推計して評価しなくてはならないというもの(図1参照)。 もっともな話である。今、牛を対象にしていくつかの事例ごとに計算を進めているところである。彼女が計算につかっている要素としては、@ルーメンおよび腸内発酵によるメタン生成;A糞尿処理で発生するメタン;B作業に使われる燃料の炭素(つまり二酸化炭素として計算);C飼料耕作土壌に蓄積する炭素量;D耕作土壌および糞尿処理過程の亜酸化窒素発生量、である。これらを二酸化炭素としての温室効果に換算する。つまり、メタンや亜酸化窒素はモルあたりで温室効果が二酸化炭素の何倍であるかにもとづいて換算するのである(すなわち二酸化炭素単位)。これを地球温暖化効果力(Global Warming Power;GWP)とする。そして、最終的には単位量生産物(kg)あたりのGWP gで評価する。また、コスト計算もあわせて行う。表1に示すような前提で推計した結果、ウイスコンシン州のマラソンにおける酪農では、土壌の炭素(=温室効果ガス)吸収と放出が平衡していると仮定すれば、牛乳1kgあたり1559二酸化炭素単位のGHGが放出されることになる(表2)。この地球温暖化効果力の38%はメタンに由来し、35%は燃料の使用、27%が亜酸化窒素に由来する。耕作の方法を工夫すれば土壌への温室効果ガス元取り込を増加させ、約1/4の二酸化炭素単位を減少させることが可能である。今後、この種の計算をカリフォルニアの酪農、ウイスコンシン、バージニア、アラバマ、テキサス、ユタの酪農+子牛生産システム、テキサスとインディアナのフィードロットシステムについて検討していく予定であるそうだ。ともかく、飼料生産を含む畜産領域における温室効果ガス放出減少には、生産性の向上(cf. Tabel 32.4 annual feeding system-related greenhouse gases from low and moderately producing cow. In Milk composition, producttion and biotechnology ed. Welch et al. 、粗飼料の利用を増やす、乳脂率、屠殺時の年齢をひきあげるなどが考えられるが、これらは、すべて上に示すような計算で効果を確認しなくてはいけない。たとえば、わら類のアンモニア処理は、消化率の向上などを通じて5000kgの処理わらあたりで3kgのメタン精製を減少させることができるが、一方で処理に使われるアンモニアが直接大気に逃げたり土壌での反応を介してNO、N2Oとなる。この量がアンモニアとして47kgで、NO,N2Oとして0.47kgに対応する。この量の窒素酸化物は温室効果力ではメタンとして7kgに相当する。したがって、アンモニア処理は家畜生産の全体を通してみると温室効果ガス発生抑制に逆効果をあたえると示唆される。要するに、この種の計算を行っていけば、どのような方式にどのような技術を導入すれば最も効果的にGHG発生を抑制することができるか示すことができるようになるだろうという。とにかくメタンを減少させると予想されても飼料生産や処理の過程で発生源となってしまってはもともこもない(cf, Effects of intnsification of agricultural practices on emission of greenhouse gases. Ward, G.M. Et al. 1993, Chemispheare 26, 87-93. The environmental impact of Bovine somatotropin use in dairy cattle. D.E.johnson et al. 1992, Journal of Environmental quality 21, 157-162. VPIconference1996chap15 )いろいろな議論をあれこれとしたがポイントは、糞尿ということになると酪農養豚養鶏がもんだいになるだろうという。糞尿からのGHG放出はポテンシャルとして腸内発酵由来の2倍はあるだろうという。それで、糞尿処理過程での亜酸化窒素放出の評価について話す。ようするに、どのような処理法を取るかによって著しく数値が変動する。たとえば、すべて嫌気で処理してガスを大気に放出するケースを最大値とすれば、糞尿を草地に還元すれば最大値の1%(人によっては10%程度に見積もる)くらいになる。タンクで処理する、ピットに入れるなども大きな変動要因であるし処理中の温度や湿度なども発生量に影響する。要するに事例ごとにかなり状況が変わるので、なかなか簡単に計算することができない。地球全体で見積もったラフな数値では家畜自体から18Tg糞尿処理系で12Tgとされているはずだという。ただし、推定で出されてくる亜酸化窒素量については人によって大きな差が認められるので、この点の計算はもっと緻密にする必用があるとの感じを持っているという。それから、IPCCのレポートに出ている家畜からのメタン発生の推定式に間違いがあるとかなり重大なこという。どこかの集会でスペインからきた誰かがこの式はほんとに正しいのかというのでよく見てみると分母の式のたて方がおかしいことに気付いたという。分母の中で割り算をしているところが変らしくナンセンスであるという。また、維持量の飼料給与を前提とした計算は、高エネルギーの飼料ではナンセンスでこうした飼料は実際には飽食状態で計算されなくてはいけないという。これは、かなり重要なクレームだと思う。まさか、日本の推定値もこの式で出していたりするとまずいのではないかと思う。最近の飼養研究では、BSTの効果を見たもの、飼料添加物としてのBrewer’s grainやDistille’s grainの給与試験の結果、メタン生成が抑制されたというものである。しかも、制限給餌の場合には大して効果がないのに、不断給餌のときに効果が大きいことをみつけており、話としてかなり筋のよいものである。彼は、こうした現象の起こる理由がよくわからないので何かよい考えはないかという。脂質のほかにひょっとしてイーストの機能を考える必用はなかろうかという。この点に関して、ぼくに正確な意見があるわけではないが、ライブイーストの給与がルーメン発酵に及ぼす影響については、すでにRowett研J.NewboldやINRA F.Chaucelatらによって明らかにされており、Liveであることの意義は、フレデリックの研究からかならずしもあきらかではない。Yeast Live CultureにふくまれるYeast Extract成分が、発酵に影響するというのではないかという推察がおそらく正しいのではないかと思える。しかし、これがどのようにメタン生成減少をひき起こすのか検討が必要な現象である。プロピオン酸生成が増加するような状況を作ればメタン生成は自動的に減少するのでプロピオン酸が増加するBrewer’s grainの効果のすくなくとも一部を表現しているのではないかと考えられる。メタンガス生成減のメカニズムについて、彼はかなり不思議に思っており、微生物学者の協力を望んでいるといっていた。東京農工大板橋グループのシクロデキストリンにハロゲン化メタンを浸透させ、ルーメン内でゆっくり放出させるという技術に関して興味を示した。 話していてふと気がつくと外は雪模様である。4時ころ退散するが、校舎から出た途端に吹雪である。ホテルまでの道半ばでJohnson先生が車で追いついてくる。乗せてやるという。ホテルまで2分くらいでつく。

12月19日
早朝デンバー空港に向かい,UA296便(ボーイング777)でワシントンDCへ移動.

12月21日
10時の約束なので9時すぎにホテルを出る。地下鉄に乗り,Judiciary squareでおりる。EPAの本庁は、南の地下鉄Waterflont駅近くだが、かれらの部局は連邦労 働省などのそばにある。いわゆるキャピタルヒル地区。 EPA- Ruminant Livestock Efficiency Program  Mark A.Orlic氏  Tom C.Wirth氏  と議論。そのほか、Reid P.Harvey Climate Policy Leader;William N.Irving Program Analystなどにも紹介される。 このプログラムが始まったのは1990年のことで議会がEPAに温室効果ガスの発生状況について調査するように要請があったため。それからメタンガスを減らす為の方策を考慮。合衆国政府内ではエネルギー省、農務省をはじめとして運輸局、気象局、航空宇宙局、ホワイトハウスのメンバーなどが参加する会合がある。これらの会合で一応進行状況とうについて議論するらしい。EPAの位置だが、アメリカ政府で関連する部局の一つということで特に調整する役割などがあるわけではない。かれらは、行政の人間であるので、話の中で日本のことをかなりいろいろ聞かれる。僕は、困ったことに行政的なことはほとんど知らないので話せない。そういう意味では行政担当者が私のような技術アドバイザー的な人間に同行すべきである。今回の視察の企画時には気がつかなかったがこれはかなり重要なことである。畜産環境対策室から誰かいっしょにきてもらえるともっと直接的な意義があったに違いない。 さて,かれらとしては,バクテリアの遺伝的改変など将来的な技術は、使用せず今ある現存の技術で対応する方法を考えている。一方,農家側は、メタン排出税のようなものがかけられるのではないかと疑心暗気で、政治的ロビー活動の圧力も感じる局面があるらしい。そこで、これは、生産効率をあげることで産物単位量あたりでメタン排出量も減らしていくプログラムなので収入には絶対に影響しないことを主張する戦術となっている。この面で提案される技術のコスト計算も重要になってくる。一方で、高校生などを対象とした啓蒙教育プログラム(農業クラブ)の展開もおこなっている。現状で考えている最も重要な対象は、肉牛生産で、とくにアメリカ南東部における比較的小規模非効率な肉牛農家を対象として考えている(Small Steps Make a Difference、AgSTAR、およびAgSTAR Digestのパンフレット参照)。プログラムの基本は、生産性を向上させることで牛の数を減らしても生産量には変化がなく、一頭あたりのメタンガス排出量がたとえ増えたとしても生産物あたりにすれば結局排出量を減らすことができるというものである。なぜ、肉牛が対象であって酪農ではないかというと、酪農にはこれ以上生産性を向上しうる余地があまりなく、すでに生産性向上のための投資がかなりおこなわれているからである。 生産性を向上させメタン排出量を減少させる技術として、ルーメン細菌の分子育種など将来的に可能性を感じさせるものもあるが、プログラムで扱っているのはとうぜん今利用可能な現存の技術の組みあわせである。BSTやイオノフォアなどの添加物の使用であるが、今主として強調しているのは、肉牛肥育管理技術の改良、特に20〜30頭規模のアメリカ南東部に数多く見られる小規模一環農家における繁殖率の向上、子牛の離乳率の向上、 粗飼料利用の向上:草種や放牧管理(とくにローテーション放牧)の導入である。USでも添加物に対する反応はよくないのでBSTなどの技術を大々的に展開するのは難しいものがある。したがって、今、展開しているのは家畜管理技術の向上(ポスターGOOD MANAGEMENT THE KEY TO SUCESS参照)である。放牧を推奨するのは、まず刈り取りや粗飼料の運搬に関わる化石燃料の消費を減らせるからであるし、濃厚飼料の消費を減らせれば耕作地における亜酸化窒素の排出を減らせる可能性があるからである。酪農では、乳牛の育種改良、BST(DonJohnsonら論文参照),などであるがBSTは食品安全にかかわってくるのであまり強く主張しにくい面がある。 現在このような事業を進行させるほかに、SF6トレーサー実験から得られる実測値に基づいてInventryの値を変更する作業を行っている。DonJohnson教授のところで聞いた家畜からのメタンガス発生量を推定するためにIPCCが提示している式の誤りについてここでも問題になっていたが、EPA自体はUC DavisのGIBBSの式で求めているためこの誤りに関係しないが、いったい日本は大丈夫だろうかと逆に心配されてしまう。現在、SF6をつかった研究を全米5大学の協力を得てモデルと実測値を刷りあわせる努力をしている。1999年5月までには新しいUS Inventoriesだせる予定であるとのことであった。 昼飯を取りに外へ出る。Eストリートを東に向かい、1stストリートのもう一つ先の通りを下がる。HolidayInnのしたのレストラン。途中めちゃくちゃおしっこ臭い。ホームレスの施設があるらしいがそこの回りを警官が固めている。しかし、この辺は連邦政府のビルがたちならんでおり、それにもかかわらずアブなげなところで,たしかに夜は気持ち悪いに違いない。ホテルがHyattなどもあるが、営業していくのは辛いかもしれない.警官の固めているところは、どうやらクリントンがホームレス施設を訪問するかららしい。夜CNNで、そういう報道がされていた。さて、道みち話すとMarkOrlicは、1970年代半ば多分平和部隊か何かでコンゴ初めとする中央・西部アフリカの国々にいたということでフランス語ができる。 午後、再び議論する。 外国と共同の作業。現在進行しているのは、ジンバブエ、ウクライナ、インド・ネパール・バングラデシュ・中国。EPAは、資金の全額を提供しているわけではないが、器具であるとか、技術研修にかかる費用など一部を負担している。そのほかは、主として農業資材メーカー、とくにアメリカやカナダのパーラーシステムを商品としているメーカーの参加を得ている。インドなどで展開しているのはRon Leng主導の糖蜜尿素ブロック。実際には、ブロックではなく、顆粒ないしはペレット状。Leng教授は、90年からこのプロジェクトに関係している。そういえば、われわれの前から消えたのもそのころか。Orlicは、Lengとの仕事がかなり気にいっているらしい。国際的な協力関係の樹立は重要な問題であると彼らは感じている。たとえば、ウルグアイのように、国全体のメタン排出の3/4以上が牛と羊由来であるような国もあるので、われわれのところで努力するのはもちろん必要だが、このような国々を支援していく意義があるという話であった。国際的な協力関係の樹立は重要な問題であると彼らは感じている。さて現在彼らが最も熱心に取り組みはじめたことは、各生産様式ごとのGHGの発生総量の推計である。すなわち、ルーメンおよび腸内発酵からのメタン発生量・糞尿処理中のメタン発生量・糞尿処理中の亜酸化窒素発生量・草地からの亜酸化窒素発生量・肥料由来の亜酸化窒素量・酪農から発生する糞尿の液状部の散布に由来する亜酸化窒素・さらに濃厚飼料生産に要する肥料や生産方式の要求する機械化によって、そこで消費される化石燃料の量から求められる二酸化炭素あるいは材料や生産物の輸送に要する化石燃料等の項目(表#参照)をすべて算出し、各生産セクターのなかでGHG発生の主要な原因を見やすくし、ひいてはもっとも効果的な対策をとりうる項目について明らかにする目的がある。今まで多くの政府組織あるいは研究機関が行ってきたことは項目別の検討(表#における横の列の比較)であり、このやりかたでは、たとえば、腸内発酵由来のメタンガスは反芻家畜が圧倒的に多くブタやニワトリでは少ないというあたりまえの事実が強調されただけのことであった。しかし、このようなやり方で項目ごとに各生産様式を比較してみても、取りうる対策の全体像は見えてこない。これは、Don Johnsonのところでも触れたことだが、アンモニア処理という技術自体は消化性が向上することによって給与量を減らせるので発生するメタンガス量を減らせることになる。しかし、この技術の重大なデメリットは処理に使うアンモニアそれ自体がGHGのソースになってしまうことである。アンモニアは当然のことながら窒素源として機能し、処理中に大気に逃げたり土壌に吸収されることにより亜酸化窒素のもとになる。結局GHGとしてすべてをたし算引き算して行けば、全体としてはGHG放出増大というデメリットのあることがわかるというわけである。これは、ある一つの項目のみに注意している場合の危険性をよく示している。こうした計算方法は、実にもっともなアイデアである。畜産技術協会の出版物でも、項目別に独立した記述と計算が行われているのみで全体をCumulativeに見通せるアイデアがあったとはいえず、今後注意の必要な観点である。じつは、この表について議論しているとき、日本の畜産業の特殊性について考え込まずにはおれなかった。それは,この表に記載されている濃厚飼料生産に関するGHG放出の項目である.日本は,濃厚試料ばかりでなく一部粗飼料までも輸入したうえで畜産業がなりたっている。そうすると、日本の現状をこの表に準じて記載していく際に、日本はこれらのものを主として合衆国から輸入しているので濃厚飼料粗飼料生産に関わる肥料などに由来する亜酸化窒素排出は合衆国でもカウントされないし、日本でもカウントされないということになってしまう。合衆国側で畜産というカテゴリーから独立して耕種の項目に加えられる以外に評価されるチャンスがないわけである。ここに示す表の体裁では、あくまでも合衆国の畜産業の各生産様式についての集計になるので取り扱い用がない数値となる可能性が高い。しかし、あくまでも家畜の飼料生産なので、項目としては畜産の項目で評価されてしかるべき問題である。合衆国では飼料の100%自給は自明なことなのでこうした表になってもあたりまえである。日本ばかりでなくEUもたんぱく性飼料を合衆国から輸入しているので、先進国では、合衆国を除いて基本的に物事は多国籍化しているという実態を反映する方法を考慮する必要がある。このような観点から政府間パネルの中のワーキンググループの機能を、数値の策定について共同作業が可能になるような形に発展させる必要が感じられる。EPAの担当者もこうした多国籍の調査事業の展開について強い希望を持っていることがうかがわれた。

12月23日
ワシントン発全日空001便で帰国.