【各種マイクロ波加熱装置】
空洞共振器(TE103, 1.5 kW @2.45GHz, 915 MHz)
材料がどの程度で瞬間的に加熱できるかを調べる装置です。
加熱対象に合わせて、装置の抵抗(インピータンス)を変化させることができるので、幅広い加熱対象を高い効率で加熱できます。
電界と磁界を分離して加熱することもできます。
また、周波数も市販の電子レンジと同じ2.45GHzと材料を内部まで加熱できる915MHzの2種類を配備しています。
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例えば、アルミナ粉に炭素を15Vol %添加した混合体の場合、 マイクロ波出力は40
W(市販の電子レンジの1/10)ですが、800℃まで1 分で到達できます。 (詳しくは、Materials, 11
(2018) 169-182 で報告。)
加熱が難しい物質でも加熱できる特徴があるので、理想的な効率を算出するために利用しています。
電界だけ照射、磁界だけ照射といったこともできるので、複合材の特定の物質だけを狙って加熱したり、金属やセラミクスを焼結したりと用途は幅広いです。 |
周波数可変型マイクロ波加熱装置 (TE103, 300 W)
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周波数可変型マイクロ波加熱装置概観。 2GHzから3GHzの周波数を選択して、材料をマイクロ波で加熱できます。
電子レンジは2.45GHzという周波数を利用していますが、材料加熱に最適な周波数は材料ごとに違います。
この装置は2GHzから3GHzの周波数を選択して材料を加熱できるので、
混合体の中にある特定の物質だけを狙って加熱することができます。
きちんと狙った物質が加熱できたかどうかを確認するために、
粉一粒の温度から計測できる二次元二色温度計や、ガス分析のためのQ-massが付随して設置されています。
また、変調マイクロ波を加熱に利用することで、均質加熱も実現できます。 |
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ジルコニアとSiC繊維混合体のマイクロ波加熱挙動。 (詳しくは、Processes, 8, 1 (2020)
47 で報告。)
マイクロ波を上手に制御することで、マイクロmの大きさのSiC繊維だけ周辺のジルコニアよりも数百度高い温度にすることができます。
こうした小さい高温領域はホットスポットと呼ばれており、マイクロ波加熱中の化学反応高速化の原因と考えられます。
(多くのマイクロ波加熱中の特殊な効果は、メゾスケールの熱力学で説明できます。
が、分からないことも多いので、私たちの研究対象として成立しています。) |
6kW級マイクロ波加熱装置(マルチ, 6 kW)
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大きな対象を加熱するためのマイクロ波加熱装置です。 市販電子レンジの10倍出力のマイクロ波で対象を加熱できます。
4方位から1.5kWのマイクロ波を照射する仕組みになっています。
マルチモードですが、中心に電界が集中できるように工夫されて設計されていて、 比較的、対象を選ばず加熱できるのが特徴です。
加熱が良好であれば、kg単位の物質を15分くらいで1000℃まで加熱できます。
スケールアップ前に大きなプラント建造に移行してよいかをチェックするために、 チェックテストの一環として利用します。
2 kg くらいまでテストでき、真空から各種雰囲気までの様々な測定に対応できます。 |
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160 gと80 gの飛灰焼結体の画像。 (詳しくは、 Journal of Hazardous Materials
369 (2019) 318–323 で報告。) マイクロ波は熱伝導とは異なり、中まで加熱できます。
そのため、熱伝導率が悪い大きなセラミクス粉も迅速に加熱できます。
そのため、高い温度が必要となる飛灰でも、大きな試料を迅速に焼結できます。
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数値計算器(COMSOL Multiphycics)
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マイクロ波が効率よく材料を加熱するかを確認するために、 数値計算(虚験といいます)を利用しています。
大きな炉を建造する場合、実験による基礎的な確認や、 幾何光学による設計だけでは不充分です。
スケールメリットや干渉効果を正しく評価するために、 きちんと加熱できるかどうかの確認を、計算実験で実行する必要があります。
当研究室では、COMSOL社のMultiphysicsを用いて、効率を高める最適な炉を設計します。
左の図は攪拌機付き6kWマイクロ波加熱炉の数値計算結果です。
装置を作る前にプラズマ発生の原因である強電界を予測し、プロセスを効率化できます。
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高温誘電率・透磁率測定装置
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計算実験で炉を作るときには、高い温度の材料がどの程度マイクロ波を吸収するかを調べる必要があります。
当研究室では共振摂動法による高温誘電率・透磁率取得に着手しています。
共振摂動法は、材料の温度が高くなった時に容器の温度を制御しやすい特徴をもつためです。
およそ、800℃程度までマイクロ波吸収の特性を評価することができます。
測定された温度特性は、加熱試験とクロスチェックすることで確度を吟味します。 (詳しくは、 SiC: Applied
Physics Letters 105 (2014) 034103 - 1-5、 Fe2O3: Chemical
Engineering & Processing, 76 (2014) 1– 5 C: Journal of
Applied Physics, Vol.112, 3 (2012) 034905 - 1 – 5 Fe3O4:
Hotta et al.; ISIJ、 Ni1-yO: Physica B, 458 (2015) 35–39
CaO, Talc: Journal of Hazardous Materials, 284 (2015)
201–206 で報告。) |
分析機器
・SEM, XRD, XRFなど
大型マイクロ波加熱装置
マイクロ波加熱は工学的出口が近い分野です。 そのため、tonスケールやそれ以上の大きな加熱対象に挑戦しています。
日産数トンから数十トンのマイクロ波加熱炉の設計に多く従事するなかで、
様々な研究者・技術者に支援して頂きながら、多くのエンジニアリングを蓄積してくることができました。
企業研究が多いので、以前はなかなか公開ができませんでしたが、
近年、マイクロ波化学プラントを積極的に取り入れた企業様も増えてきて、状況も変化してきました。 例えば、公開できる実績については、以下です。
マイクロ波製鉄で採用されたマイクロ波加熱装置 日産160
kgのスケールで銑鉄を製造できます。
この炉は30kW クライストロン 4基で大出力の電磁照射を実現しています。
誘電率の温度特性を計測することで、合理的なマイクロ波照射を達成しました。
詳細は以下。 Chemical Engineering &
Processing, 76 (2014) 1– 5 Journal of the
Technical Association of Refractories Japan, 34 [2] (2014) 66-73 |
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アスベスト無害化炉 東北に建造されたアスベスト無害化炉。 80
kg/ hourでアスベスト含有スレートを無害化できます。
この炉は6kW マグネトロン 4基で大出力の電磁照射を実現しています。
ガスとMWのハイブリッド加熱で、ロータリーキルンでの迅速な加熱と大量処理を達成しました。 詳細は以下。
Journal of Hazardous Materials, 284 (2015) 201–206 Journal of
Hazardous, Toxic, and Radioactive Waste (2014) 04014041-1-5 |
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マイクロ波加熱技術の普及を推進しています。
当研究室は、「マイクロ波加熱だからできること」や「マイクロ波加熱でないとできないこと」に挑戦し続けてきました。
科研費や国プロに携わってきて得られた研究成果や、 基礎からスケールアップまでの技術ノウハウを、
学会や産業界に還元することが大学の大切な使命だと考えています。
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