研究成果

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春日井コモンズ研究会

趣旨

科学は、個性あるいはひとつひとつの個を特別視しないことによって一般化を達成した。これを人間についていえば、個人的な主張や個人の特性を消し去って、社会全体の最大多数の意思を想定し、統計的な扱いの1要素として扱うことを意味する。その際にとられる手法は、元素や一般化した個人など要素への還元、数量的表現の適用、法則による簡潔な表現、などである。このように一般化することによって、科学や民主主義は社会の多数の人に受け入れられた。

最近、科学技術への疑問や反感が示されるのは、一般化への反発、民主主義への疑問、個人の存在の主張、多数派からこぼれ落ちた人間の救済、といった問題がその根源にあるように思われる。これらは人の生き方の問題から、国際政策の方針にまで広がりと関わりを持つ課題である。端的にいえば、一般化された社会の一部としての個人と、今ここに居る「私」とを区別して扱ってほしいという欲求ともいえる。しかし、個、個人、個性を認めることは科学そのものを否定することにつながりかねないジレンマもある。

私たちは科学に疑念を持ちつつも、科学技術の影響下に暮らす状況にある。相容れないように見える2つの概念、「科学」と「個としての私」を同時に扱う可能性はないであろうか。その一つは融和的とも言える方法で、認知科学や神経科学への期待が考えられる。もう一つの対決的方法は、その相容れない本質に対決して、新しい高次の分野を創出する挑戦を試みる方法であろう。後者の方向を模索することを出発点として、科学側の人々と人文学側の人々、そして仲介的には哲学の人々が共に話す共通の場として春日井コモンズ(コモン)研究会を設定し、「科学と“私”」をその研究課題のひとつとしたい。

平成20年4月25日
中部高等学術研究所
長島 昭

これまでの講演者とテーマ

プレ研究会 2008年3月28日

春日井コモンズ研究会提案と話題提供

講師
長島 昭、佐藤淳二、山田慶兒

第1回研究会「科学と私」シリーズ 2008年6月13日

講師
佐藤淳二(中部大学中部高等学術研究所客員教授
・北海道大学大学院文学研究科教授)
演題
「科学と〈私〉―― 個体の消滅と再生」

第2回研究会「科学と私」シリーズ 2008年7月25日

講師
坂口恭平(建築家、『0円ハウス』著者)
演題
「都市狩猟採集民の家―浅草・隅田川に建つ0円ハウス」

第3回研究会「いのち」シリーズ 2008年9月26日

講師
中島 泉(中部大学副学長)
演題
「「いのち」と「ヒト」の原点を考える」

第4回研究会「いのち」シリーズ 2008年12月12日

講師
山田 慶兒(中部大学中部高等学術研究所客員教授)
演題
「中国思想における「いのち」」

第5回研究会「いのち」シリーズ 2009年1月23日

講師
中村 桂子(JT生命誌研究館館長)
演題
「“生きている”を見つめ“生きる”を考える」

第6回研究会 2009年3月6日

講師
長島 昭(中部大学中部高等学術研究所特任教授)
演題
「数量化社会のほころびと再生-“私”の視点から」

第7回研究会 2009年4月17日

講師
阪上 孝(中部大学中部高等学術研究所副所長)
演題
「科学と「私」-問題の系譜」

第8回研究会 2009年6月5日

講師
井上 輝夫(中部大学中部高等学術研究所教授)
演題
「自己主張としての文学の役割」

第9回研究会 2009年7月31日

講師
和田 伸一郎(中部大学人文学部講師)
演題
「メディア技術は、どのような「コモンズ(共)」を出現させることができるか」

第10回研究会 2009年10月9日

講師
小沢 慎治(愛知工科大学工学部教授)
演題
「個人識別に関わる情報処理技術」

第11回研究会 2009年12月4日

講師
立川 武蔵(愛知学院大学文学部教授)
演題
「生命に目的はあるのか」

第12回研究会 2010年1月29日

講師
千葉 成夫(中部大学国際関係学部)
演題
「美術はいま何をやろうとしているのか-感覚の彼方・物質の彼方・行為の彼方」

第13回研究会 2010年2月10日

講師
小島 亮(中部大学人文学部)
演題
「歴史学の終焉」

記念シンポジウム 2010年3月18日

講師
飯吉 厚夫(中部大学総長・中部高等学術研究所所長)
演題
「学問の再構築」
講師
所 眞理雄(ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長)
演題
「オープンシステム・サイエンス」
講師
加藤秀俊(中部高等学術研究所顧問)
演題
「科学の文学」